初恋
「僕は花優愛ちゃんに用事があるんです。少しだけ、時間貰えませんか?」


怒っている人への対応を知り尽くしているように先輩は喋った


具体的にどうとかではなくて、全体的に母よりも大人だった



「…少しだけですよ」


溜め息を吐きながら、母は家へ帰った



その時の私はただただ驚くばかりで、しばらく声が出なかった



「大丈夫?…足、血出てるし裸足だし。…泣いてるの?」



足を見れば、裸足のせいか爪や指の付け根、足の裏等々、切り傷やかすり傷が多く出来ていて 血がこびりついていた



傷をあらためて見ると、痛くなった



手で頬を触れば、幾つかの雫に触れた



先輩の顔を見上げると、何故か酷く安心して涙が溢れた



眼帯が涙のせいでベトベトする



何もいわずに涙を流し続ける私の頭を先輩は撫でてから、私の手をとり歩き出した



相変わらず私の目からは大量の涙が流れている



怖かったのと、先輩が優し過ぎる事、色々な事が混じって 涙へと変わっていた



「あ。ごめんね。…はい」


何かに気がついたように先輩は私に謝ってから手を離して しゃがみ込んだ



「足、痛いのに歩かせてごめんね」
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