初恋
17
登校しているとき、先輩は嬉しそうに耳を見せてきた




「嬉しくてさ(笑)似合うでしょ!」


へへ、とわざとらしく笑ってから、昨日のテレビがどうだとか、好きなアーティストさんの新曲が凄いとか、いつもと変わらない話をしてきた




最後なんだから、少しくらい重い話でもいいのに




最後まで先輩は私に気をつかう




誰も居ない道の途中、私は先輩に抱き付いた





手の届かないところに行ってしまいそうだった




番号もアドレスも家の場所も知っているけれど、なんだかもう永遠に会えないような気がした




先輩は強く抱き締めてくれた




「背、伸びたね」




私の頭を撫でながらそう呟いた




小さい頃、お母さんがこんなことしてくれたなぁ






「痩せたね。食べてないの?」





もとの体重に戻っただけで、痩せたって程じゃないよ





「卒業するけど、俺には花優愛しかいないんだから、離れる事はないよ。学校で一緒に居れないから心配だけど、新しいクラスにもなるし、頑張れるよね?」





頑張れないよ。甘えるのはダメだって分かってるけど、私独りぼっちだよ




「…行こうか」




頭を撫でていた手が私の手に移動した




私は何も言わずに半ば引っ張られながら歩き始めた




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