初恋
学校まであと少しの所で、1人ぼっちになってしまった





けれども、今の私は先輩がいないほうが楽だ





汗をハンカチで拭いて、大きく息を吸った




まだ冷たい空気が体に入ってくる




大丈夫、大丈夫




少し頭が痛いけど、すぐになおるはず




先輩は私に良くしてくれた



先輩は私を人間として見てくれた




いい人じゃないか




頑張れ、頑張れ





自分を励ましながら学校まで歩いた





教室に行くまでに、先輩には会わなかった




先輩の大きな笑い声が聞こえたけれど、聞かない振りをした





教室では詩音が話しかけてきた




笑顔で答えながら、先輩の事でいっぱいだった





体育館では男女別に並んで座った




周りは女の子ばかりだったから、平気だった





前に座っている子達が振り向いて私を見て何やら話している




後ろの子達も私の事で笑っている




慣れたはずなのに、悲しさが募る




新しいクラスも、こんな感じかなぁ




式が始まると、皆静かになった




卒業生が入場してきた時、先輩を探した




あの背が高い人は先輩だ




先輩がこちらを向いた




小さく手をふってくれた



女子たちが叫んでいる中、私は小さく手をふりかえした




周りの女子たちが私の事を言い始めた



先輩の人気は凄いなぁ




先生の注意の声でざわつきはやっと収まり、式も流れるように終わった




泣いている女子や喜んでいる女子もいたけれど、私は真顔のままだった





退場のときも入場のときと同じような事が起きたけど、気にしない





帰りの会も終わり、先輩が迎えに来てくれた





手を握りしめて、深呼吸した



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