天狗様は俺様です!
「でさ……そろそろ速人くん放してあげて欲しいな。そのままだと窒息死しちゃうよ」


 ミヤちゃんの言葉に私は「え?」と川内くんの方を見る。


 いつの間にか私は彼の鼻まで塞いでいたらしい。

 しかもさっきミヤちゃんを抱きしめたいと思ったのに耐えるため、手に力が入ってたみたいだ。


 川内くんは苦しそうに私の腕を叩いている。

「あ、ごめん」

 流石に私も悪かったなと思い謝りながら手を放した。


「っげほ!」


 川内くんはそうとう苦しかったのか、急に吸い込んだ息でむせていた。

「げほっ……実花ちゃ……、ひどっ……こほっ」

 むせながらも非難してくる川内くん。

 私はそれに対してやっぱり言葉で謝ることしかしなかった。


「うん、だからごめん!」

「お前、それ本気で悪いと思ってねぇだろ!?」

「……」


 いや、だって。

 私どちらかと言うと川内くん嫌いだし。

 というか、襲われかけた記憶しかないのに好きになれるわけないって。


 なんて思いながら、哀れみと嫌悪の混じったような眼差しを向けると。



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