アイ・マイ・上司【完全版】
“イイ返事を聞かせて欲しいな”
そう笑って、最後にまた髪を撫でられると。
そのまま1人、タクシーに押し込まれて別れた私たち。
アノ時、あと一歩の勇気が出せなくて。
ファジー・ネーブルのような、彼の胸に飛び込めなくて。
意気地ナシの結果が、この有り様だ…。
何の進展も見られない代わりに、私の中でガラリと変化を遂げたモノ。
それはアノ日から課長を、眼で追ってしまうこと。
多勢の女性社員に混じり、密かに一瞥するようになって。
寸分の隙も見られないほど、仕事への姿勢が半端ではない姿に胸が高鳴る。
注視するウチに気づいたのは、部下以上に自身に厳しいという事。
部下の仕事がスムーズに行えるよう、先を見越した的確な指示を流すから。
決算が滞りなく終えられるのも、裏でフォローを重ねる彼のお陰だと知った。
ただの手厳しい人柄ではないから、人を惹きつけて止まないのだと…。