迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*




「……もう、こんな時間?」



時計を見て驚いた。


本当なら、とっくに着いているはずの時間。


まったく、茉奈ってば。


顔を合わせるなり泣きついてきたから何事かと思えば。


「明日のテストのノート貸して。」


って……。


また?




いつの間にか、大学はテスト期間に入っていて。


終われば、あとは夏休みを待つだけ。


もう残りわずかだって言うのに……


ホームシックだなんだで、ろくに授業を受けていない茉奈は最初から最後まで私に頼りっきりだ。


今日だって、ノートをコピーするに止まらず、別の講義のレポートまで手伝わされちゃったし。


おかげですっかり遅くなってしまった。


……航くん、待ってるよね?


一応、連絡しておこうかな?


そう思ってケイタイを開きかけたとき……



ドンッ。



「……わっ」



手元に気を取られていたせいか、誰かに思いっきりぶつかってしまった。



「ご…ごめんなさいっ」




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