迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*




バサバサと音を立てて散らばった本や小冊子。


ここは大学の図書館の前で、今はテスト期間中。


それは大事な“資料”なわけで……



「ごめんなさいっ!」



もう一度謝って、慌ててそれを拾いにかかる。


よりによって土の上。

汚れてないよね?


ひとつひとつ確認しながらも集め終えて……



「本当にごめんなさい。」



頭を下げて、そのままそれを相手に差し出した。



……のに。



「……。」



反応がない。


おかしいな、と思って顔を上げると……



「……え?」






そこにいたのは、


1人の男子学生。


驚きを露にしつつも、まっすぐに私を見つめる瞳。








「……立花実咲?」










私はこの人をよく知っている。














「……成海先輩。」




何年ぶり、だろう?




< 242 / 243 >

この作品をシェア

pagetop