迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*
バサバサと音を立てて散らばった本や小冊子。
ここは大学の図書館の前で、今はテスト期間中。
それは大事な“資料”なわけで……
「ごめんなさいっ!」
もう一度謝って、慌ててそれを拾いにかかる。
よりによって土の上。
汚れてないよね?
ひとつひとつ確認しながらも集め終えて……
「本当にごめんなさい。」
頭を下げて、そのままそれを相手に差し出した。
……のに。
「……。」
反応がない。
おかしいな、と思って顔を上げると……
「……え?」
そこにいたのは、
1人の男子学生。
驚きを露にしつつも、まっすぐに私を見つめる瞳。
「……立花実咲?」
私はこの人をよく知っている。
「……成海先輩。」
何年ぶり、だろう?