迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*
席に戻るなり、
「いやーっ、まぁ、公衆の面前でイチャついてくれちゃって……」
茉奈が楽しそうに寄ってきた。
あれのどこが?
別に普通…だよね?
……っと、それどころじゃなかった。
鏡。鏡……
無言で、でも急いで鞄からポーチを取り出す私に、
「それにしても……
すっかり“イイ男”になったよねぇ」
半分ひとりごとのように呟く茉奈。
「えー…?」
鏡を確認中の私。
あー…ホントだ。
なぜか下に敷いていた…らしい、教科書の跡がしっかりついている。
恥ずかしいなぁ……
悪いけど、茉奈の話は半分聞き流してる状態。
なのに……
「中学の頃はさ、
どっちかって言うと“カッコイイ”より“カワイイ”って感じだったのにね」
ひとり、続ける茉奈。
「男っぽくなったっていうか…
なんか、無駄に色気が出てきたって感じ?」
「は?」
「まぁ、それはみさきのせいかもしれないけど」
……なんで、私?
何言ってるんだか。
「でもさ、
とても年下とは思えないよね」