君だけしか映らない
振り返るとそこには佐伯悠哉が立っていた。



「佐伯くん…!いつの間に…。」



「欲しいのか欲しくないのか、どっちだよ。」


ちょっと不機嫌そうに問い詰められる。



「いや…別に欲しくないよ」


「…あっそ。」



そう言いながらも佐伯悠哉はUFOキャッチャーにお金を入れた。



(え…?やるの?)



その行動に思わず見入ってしまう。
佐伯悠哉は慣れた手付きでUFOキャッチャーを操作していく。



「うわぁ…!すごい!!」


思わず笑美は佐伯悠哉に近付いた。意図も簡単にぬいぐるみを持ち上げ、そのままぬいぐるみは穴に落とされた。


「すごいすごい!!佐伯くん上手だね!!」


興奮ぎみの笑美は佐伯悠哉をバシバシ叩きながら喜んでいた。



「いてーよお前。そんなに叩くな。」



(やば…私ったら何やってんの…!)


我に返った笑美は恥ずかしそうに目を伏せる。



「…ごめん。」



「別にいいけど…。ほら、これやる。」


「え…?」



そう手渡されたのは佐伯悠哉が取ったネコのぬいぐるみ。



「えっ…でも悪いよ…せっかく取ったのに…。」



「男がぬいぐるみなんて持ってても気色わりーだろ。…いらないなら捨てる。」


「えっ!!い、いる!!捨てるなら欲しいです!!」


「…ったく、最初からちゃんと言えっつーの。」



「ほら」と言って佐伯悠哉はぬいぐるみを笑美に渡した。


「…ありがとう。」


ぬいぐるみを手にした笑美の表情は本当に嬉しそうだった。



「ふふっ…すごいかわいい!!佐伯くん、大事にするね」


「っ………!」



笑美が佐伯悠哉に微笑むと、佐伯悠哉は顔を赤くして目を逸らした。



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