君だけしか映らない
「おい、悠哉!」



向こうから加藤が近付いて来た。


「ここにいたのかよ。今さ、あの子たちと話しててみんなでカラオケ行こうってことになったんだけど、お前ももちろん来るよな?」


そう言って加藤が指差す方を見れば、4人の女子高生たちがいた。制服からしてあれは桜ヶ丘高校だ。桜ヶ丘高校は可愛い子が多いと有名だった。



「あの子たち結構レベル高いだろ?お前、昨日カラオケに来なかったんだから今日は来いよ。」



そう言い終わると加藤は笑美を見た。



「…てか委員長、まだいたの?」


「………。」


「悠哉のパシリでここまで付いてきたみたいだけど、いい加減空気読んでほしいんだよね。」


笑美を見る加藤の目はとても冷たいものだった。


そんな加藤の態度に笑美は意外に冷静だった。



「…ごめんなさい。私、自分が場違いだって分かってはいたんだけど…。」



そう言って笑美は佐伯悠哉のカバンを佐伯悠哉の目の前に差し出した。



「さすがにカラオケまで付いて行くなんてことはしないので安心して下さい。…私はこれで帰りますね。」


佐伯悠哉は差し出したカバンをなかなか受け取ろうとしなかったので、笑美は無理矢理カバンを佐伯悠哉の胸に押し当てた。




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