恋愛温度、上昇中!
「関谷も、トイレ?」
気付けばあたしはそう聞いていた。前後の会話なんか無視だ。
「馬鹿?」
関谷が心底呆れた声で息を抜く。近くの備え付けの灰皿で火を消して、ゆっくりとあたしに近付いた。
「馬鹿って、」
「もう、いい。面倒くさい、行くぞ」
あたしの反論を許さない、とでもいうように関谷はあたしの前を歩く。僅かな距離、訳が分からず足の動かないあたしは立ち止まったままで、
「…痛むか?」
関谷が、振り返った。こんな光景、前にも見たな、とぼんやり思う。動物園の帰り、関谷はこうして前を歩くのに、あたしの存在を確かめるかのように時々振り返った。
重なった景色に、頭を振る。
それより、関谷の言葉が気になって、
「なにが?」
あたしはその感情を宿さない切れ長の瞳を見つめた。