恋愛温度、上昇中!
うん、普通だ。
どこもおかしいとこなんかない。
だけど新鮮な空気が吸いたくてあたしは席を立つ。気付けば暦が変わってもうすぐ、秋と呼ばれる時期で。
それでもまだ夏真っ盛りのような暑さに目眩がした。
「高見ちゃん?」
ポンと肩に手を置かれて反射的に振り返る。
「……お久しぶりです」
「んー?なんで一瞬間が開いたのか聞いてもいい?」
柔和な声は耳に優しくてそれに似合う笑顔を張り付けるのに、駄目だ。付き合いが長くなっても根本的にあたしはこの人にどう接して良いのか分からない。
「山都さん、用事が済んだら早く帰社して下さい」
「冷たいねー?そんなとこも相変わらず食べたい位可愛いけど」
眼鏡の奥の瞳がからかうようなに色を変える。
出会った時から相変わらず、このひとはこんな調子だ。