恋愛温度、上昇中!
まだ二人きりの室内に、パソコンを打つ音、たまにペンを落とす音だけが響く。小倉さんは赤縁の眼鏡をかけて画面を黙々と見ている。
「目が悪かったのね」
知らなかった。
あたしの言葉に小倉さんはこちらに視線を返す。
「悪くないですよぉ。インテリ眼鏡ですぅ。ファッションのつもりなんですけど頭良さそうでしょ」
テヘッと笑う笑顔。そんなもんなのか、と薄い感想だけ。目が良いなら良いに越した事はないし「ふーん」とあたしもそれだけ返した。
「主任みたいになりたいんです」
だから、小倉さんの言葉に瞬時に反応出来なくて「あ、そう」なんて素っ気ない返事をしてしまった自分が悔やまれて仕方ない。