少年少女リアル
 奥歯をぎりりと噛む。空中で手持ち無沙汰になっていた手は、自分でも気付かない間に拳を握り締めていた。

「……何なんだ」

「え?」

「何なんだよ、お前」

滑り落ちた言葉は力ない声で再生された。
頬が引き攣る。麻痺してしまったのか、自分が話しているという感覚がない。

「もう、いい加減にしろよ」

声を出すのが苦しくなってきた。
喉から込み上げてくるような感じは、吐き気に近い。
言葉は頭を零すと、芋蔓のように僕の口から本体を引っ張り出されていく。

「お前のせいで、お前が優しくするせいで、向井さんがどれだけ傷つけられてるか、何で分からないんだ」

「……」

「何で、何でそういう事するんだよ……!」


加治原は驚いたような、満更でもないような、読み取れない表情をしている。
睨み付ける眼が熱を帯びていく。

どうしようもなく震える唇を噛むと、こめかみの下がキンと痛んだ。

「頭可笑しいんじゃないの?! ……気付けよっ……!」

握りしめてどうしようもない拳で壁を叩くと、ドンと音を立てた。
掌の腹から電気が走る。痛みで痺れすら感じなかったのか、痺れで傷みを感じなかったのか。

「お前が……、お前がそうやって優しくするから、忘れられないんだろ……!? 無神経、なんだよ!」
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