少年少女リアル
 彼女は芯の強い目で僕を睨んだ。

「……狡いよ、そんなの。卑怯だよ。逃げないでよ」

か弱いのは、僕の方だ。
目を合わせる事すら恐ろしい。
逃げない彼女は、僕よりも強いのかもしれない。


「忘れろだとか、ややこしくするなだとか言っておいて、散々振り回して……こんなのってないよ。それでも、放っておけないんだよ?」

息を吸うと、また少し咳き込んでしまった。胸が支えてもどかしい。

「私、もうどうしていいか分からないよ」


息がまだ整わないうちに、ごめん、と口が動いた。
言葉を吐くと、歪んだ顔がそのまま子供のように泣きそうになった。堪えるのが辛いほど、苦しい。

「僕も分からない、分からないんだよ」

熱を帯びているせいで、目からいつ涙が落ちても気付かないだろう。
何か分からない。
胸が込み上げて泣きそうだというだけで、実際は涙ぐんでいるわけではないかもしれない。それほどに感覚がない。


自分の言っている事が筋の通っていない事だとも分からないほど、頭が回らなかった。

そのまま彼女から言葉を掛けられる事なく、僕はその場を去り、虚ろな状態で学校から逃げた。
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