少年少女リアル
 別れの挨拶を告げると、向井さんを置いて僕は屋上を後にした。

青白かった廊下は、すっかり夕暮れ色に染まっていて、暗い廊下を照らすのは夕日だけ。

窓のガラス越しに見える空は、オレンジと青の絵の具が混ざった瞬間のようだ。
まるで、一つ一つの窓が額に飾られた絵画みたいに、美しい景色が広がっている。


あの時もこんな空だった――

僕は鮮やかな夕焼けに見とれ、放課後の、この画廊を歩いていた。


図書委員の僕は、図書室の当番を終え、職員室へ向かっていた。
この道を行き来するのも二年目で、すっかり慣れた。目を瞑って行けるほどではないけれど。

静かな廊下。
この時間と景色が、僕は理由なく好きだった。この日までは。



「丁度良かった! 悪いけど、雑用頼まれてくれないかしら?」

図書室の鍵を渡すなり、帰さんとばかりに教師は僕を呼び止めた。

面倒臭い。内心とは裏腹、そんな素振りは全く見せずに、何か尋ねると、

「この資料、美術準備室に運んでおいてくれない?」

と段ボール箱を引っ張り出してきた。

「はぁ」

「高いから大事に運んでちょうだいね。悪いけど」

「何ですか、それ」

見るからに重そうだ。

「教材よ、教材」

満面の笑みを作ると、僕に箱を持たせ、職員室の外まで送り出した。

「美術部の子がまだいるはずだから、鍵は開いてるわ」

と少し見送ったところで言い加えた。

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