少年少女リアル
「昔、お母さんが、葱を食べたら頭が良くなるって言ったから、たくさん食べてたけど」
なんて話だ、と思いながら、返却された本に目を通す。
試験後だからだろうか。いつもより本の数が多い。
「効果ないわね」
そうでもない。と思う。
彼女は聡明だ。
葱の効果かどうかは、僕が知るところではないけれど。
「今じゃ見るのも嫌だ」
思わず、笑いが零れてしまった。
聡明だけれど、この人はどこか拍子抜けなところがある。
「夏目さんは進学しないの?」
「分からない。でも、進学しないと損だよね」
夏目さんはごそごそと鞄の口に手を突っ込んでいる。
中から文庫本が二冊出てきた。
「やりたい事なんてないもの」
もう一冊。それから、また。
まだ探っている。
一体、何冊借りたんだ?
「見ていい?」
出てきた文庫本を手に取る。
夏目さんは難しい顔で鞄を覗きながら、どうぞ、と返事をした。