少年少女リアル
 八月に入っても、相変わらず、猛暑日が続いている。日々、最高気温を更新し続けて、果てが来るのか不安になるほどに。
蝉の声が耳に焼き付いてしまい、もう鳴いていても神経を奪われる事がほとんどなくなった。

「じゃあ、バニラでいいよ」

「分かった。今度買ってくるね」

夏目さんだったら、「平々凡々な解答ね」なんて厭味を飛ばされるのが想像できた。
カップアイスを一口食べ、おいしい、と幸せそうに顔を綻ばせる。

この笑顔も好意も、本物かどうか。正直、疑問だ。僕はこんな斜めな見方しかできない。

人の本意なんて、見えるものじゃない。
どんなに美しい人も、温厚そうな人も、腹では何を考えているか分からないのだ。いくら向井さんがお人好しで、純粋そうに見えたとしても。


「暑いからかな、溶けるのが早いよ」

「絵の具みたいだね」

パレットに広げた、白の絵の具と見比べる。瓜二つだ。

「そんな事言われたら、味が分からなくなってきた」


向井さんと話すのは、嫌いじゃない。

けれど、どこか構えてしまう。
元橋さんや武村と話すのと同じようには感じられないのだ。

それは、僕が向井さんに負い目を感じているからであって。


時々、彼女が僕に気を遣っているように感じるのも、理解できなかった。
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