少年少女リアル
 ベストは僕にぴったりのサイズだった。一から元橋さんが作ってくれたのだとしたら、彼女はとても優秀だと思う。
同じように横で試着させられている冴木の分は、少しサイズが合わなかったようだけど。

「うん、二人共すっごく似合うよ!」

喜ぶべきだろうか。何だか複雑な気分だ。冴木は「サンキュー」なんて言っている。

「てか、衣装にこんなにお金かけていいの?」

背広を広げると、膝ほどまで丈がある。生地代だけでもかなり嵩んでいるはずだ。

「いいのよ、削るところは削ってるし。それに、ここだけの話、担任から融資もらってるんだよね」

完全な違反だ。
こんな黒い話を屈託のない笑顔で語る元橋さんは、恐ろしい女だと思った。

「看板もお金かかってるんじゃないの」

僕が話を向けると、向井さんは明らかに目が泳いだ。

「えっ、まぁ……何とか大丈夫、だよ」

「まさか実費?」

「ちょっと、だけ」

委員だからといって、そこまでやらなくてもいいのに。
お人好しなのか、ただの世話焼きなのか。向井さんの感じでは、後者はなさそうだ。
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