少年少女リアル
 武村の楽しそうな横顔が人垣の間から見えた。

気付かれないように、静かに群れから抜ける。
抜けたら、もうはぐれたと同じだ。少し距離が空いたらおそらく僕がどこにいるかも分からなくなる。


人混みを分けて進むと、不意に鞄を捕まれた。

「曾根君、どうしたの?」

しくじった。
と、顔に出ないよう、咄嗟に笑ってみせる。

「水買ってくるだけだから」

呼び止めたのが向井さんだと気付き、さらにぎょっとした。慌てて顔を背ける。

「はぐれちゃうよ」

「向井さんこそ、早く戻らないとはぐれるよ」

「私も、」

彼女に構わず、また足を進める。
夏目さんが言う僕の冷たい所って、こういう所かもしれない。

「私も一緒に行く」

一体、何を。
眉を顰めて振り返る。


屋台の灯りが、彼女の顔右半分を照らしていた。
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