少年少女リアル
 どんな顔をしていいのか分からない。
どうして、いつもこう向井さんが僕に立ちはだかるんだ。

必要な事だけを聞いて、出来るだけ目を合わせなければいい。

それだけだ。それ以外を考えるな。


近付いていくと、向井さんはすぐ僕に気が付いた。目が合わないように、脇へ視線を逸らす。

「曾根君」

「看板どこに運べばいいの?」

故意ではあったけれど、つくづく僕は無愛想だと思った。

「うん、えっとね、五組の隣りだから……」

「奈央?」

不意に彼女の名前が呼ばれ、顔を上げた。男の声だ。

「奈央じゃん」

今にも瞳孔が開きそうなほど、向井さんは目を見開いていた。
一瞬、彼女の表情がなくなったのを僕は見逃さなかった。

「か、加治原先輩……」


本能と言えば大袈裟だろうか。

これが先輩、向井さんが泣くほど好きだった「先輩」なのだとすぐに分かった。

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