少年少女リアル
 男が近付いて来ると、向井さんは硬直してしまった。
例えるならば、蛇に睨まれた蛙?
いや、少し違うか。首を傾げる。


「久しぶりだなー! 最近部活出てないから、寂しいよ」

優しそうな人だ。
人から恨まれる事など、疎遠なんじゃないかと感じるほど。厭味なほど。

「ご、ごめんなさい」

「いや、俺はもう引退だし、全然良いんだけどね。って、こんな事言っちゃ小田切先生に絞め上げられるか」

優しい笑い方。
向井さんの笑い方はこの人にどことなく似ているのかもしれない。

「あ、そだ。奈央にCD返さなくちゃなんないんだ」

「あ、あぁ……」

動揺しているのだろうか。向井さんの返事がぎこちない。苛立ちさえ覚える。

「二組だっけ? 今度返しに行くよ」

「いえ、そんな……悪いし、私、取りに行きますよ」

「いいって。俺が借りてるんだし」

人懐っこい目尻が緩む。
優しい笑みを零すと、加治原と呼ばれた男はペットにでもするように彼女の髪を撫でた。

「奈央は気を遣わなくていいんだよ」

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