失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】



うん…そうだね

きっとそれが正解なんだ

兄貴はあの人の心を癒すために

その身を犠牲として払ったのだ

ただ愛のために

ただ愛だけのために

過酷な運命というイバラの冠を被り

呪われた身体と戦い

それでも愛することを

やめなかった

だからあの人は最期に気づき

悔恨の涙を流すことができたのだ

あの姿には悔い改めの光が

宿っていた

でなければ僕は彼を決して

赦したりはしなかっただろう

たとえ兄に生き写しだとしても

僕はその光を見ずに

彼を赦すことはなかっただろう

今も全て赦せたわけじゃない

あの人の呪いは

まだあの男を通じて生きている

兄を処刑する者

僕の地獄巡りの案内人

だが彼はあの人の替わりに

僕を正確に兄と同じ地獄へ導いた

僕が兄の苦しみを理解するために

そしてすべてが動いた

母の秘密に隠された時間という名の

それは「鍵」

兄の閉ざされた心を開くための…





闇が光を呼ぶ

光が闇を照らす

どちらも見せて僕に

全部愛してる









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