失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
「そうか…ようやく邪魔者が消えた
のに…邪魔な君と一緒に兄さんの闇
も消えてしまったとは…なんて皮肉
な話だ…」
「んあああっ…!」
彼は内臓を突き刺すように
深々と僕を貫きえぐった
彼の身体の下で僕の身体が軋んで
悲鳴をあげる
「君なしでは兄さんには闇に堕ち
得なかった…そういうことか…確か
に君の身体をこんなにした罪は重い
君は兄さんを恨まないのかな…?
人生のスタートを挫かれ…倒錯した
異常な快楽を刻みつけられて…私の
復讐の犠牲にされ…こんな風に身体
を開かされ…よがり狂って…君の
苦しみは全て兄さんのせい…そうで
はないのかな…?」
「んっんっんっ…んん」
「こんなに乱れて…可哀想に…君の
身体は狂ってる」
彼の言葉が僕の愉悦に油を注ぐ
兄に…兄に…
された…
ああ…兄が…
僕には恨む理由は見つからない
一切…
あなたの質問は不毛だよ
でも兄のことを聞くと
身体が熱くなる
この狂った身体で兄に抱かれたいと
心の底から思うよ…
「ああっ…あっ…やめ…うっ」
快楽の飛沫が僕自身を汚す
「こんなこと…この前までなかった
のに…君は…開ききったんだな」
彼は嬉しそうに微笑んだ