失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】




空虚

僕はいつもそうして

自分にだまされる

成果って…甘い罠みたいだな

何か積み上げたいんだ

まだ…この世界に居られると

思ってるの?




それはクセみたいに僕を期待させ

虚空へ放り出す仕組み

どうすれば僕は

その期待から逃れられるだろうか




バンドの達成感はいつも僕を

高揚させそして

唐突に空虚感に連れて行く

僕には何かを達成して

積み上げられるものは

ない

ただひたすら流れに従うだけ

ただ淡々と出来事を見守る

良いことも悪いことも

僕の心を揺らして通り過ぎる

そこに求めて満足するものはない…

のか…な…




僕はベッドに転がっていた

両親に一次予選通過を

告げる気もなく

部活から帰ってその足でシャワーを

浴びてベッドにもぐり込む

そのまま寝た

夕飯も疲れてるから寝ると母に告げ

キャンセルした

兄はバイトで今日も遅い

暗闇で手首を握った

盛り上がった傷痕を指で確かめる

少し深く息が出来るようになった

この前よりはずっとマシ

だけど…




なぜ…だろう…

あのバンドのみんなが

僕は大好きなのに

一緒に創りあげていきたいのに…




空しさのわけを

どうか

僕に教えて欲しい






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