王子様の甘い誘惑【完】
「……おい、聞いてんのかよ」
蓮の姿をぼんやりと見つめる。
ミルクティー色の髪を指先で弄りながら、蓮は眉間に皺を寄せた。
その仕草に胸がキュンっと高鳴る。
あたしはきっと、蓮が何かする度に今みたいにドキドキして。
暴れる心臓を抑えるのに必死になるんだ。
「洗い物終わったら行くから。ソファで待ってて?」
蓮からパッと視線を反らして、シンクに移す。
彼氏に見惚れちゃうなんて、今後が思いやられるよ……。
するとその瞬間、背後に人の気配を感じた。
「……――ッ!!」
振り返る間もなく蓮は後ろからあたしをギュッと抱きしめた。