王子様の甘い誘惑【完】
驚いて持っていたスポンジをシンクに落とす。
泡だらけの手を呆然と見つめていると、蓮はあたしの耳元でそっと囁いた。
「そんなの後にしろよ」
「……っ……――!!」
温かい蓮の息が耳にかかって体がブルッと震える。
体中がカーッと熱くなって、呼吸が苦しい。
「……蓮……離して……?」
あたしの胸の前でクロスしている蓮の腕。
バクバクとうるさい心臓の音が、蓮の腕を通して伝わってしまうんじゃないかって、ちょっぴり不安になる。