王子様の甘い誘惑【完】
「ハハッ……あたし、何で泣いてんだろ……」
笑ってごまかそうとしても、涙はどんどん溢れてくる。
こんなことになるなら、蓮を無理に誘わなきゃよかった。
蓮が文化祭にこなければ、愛子さんと会うこともなかったんだもんね。
蓮と一緒に回れるなんて一人で喜んで……バカみたい。
あたし、ホントバカだ……――。
「何があったか知らないけど、無理して笑わなくていいんだよ」
「……はい」
あたしが頷くと同時に、体がフワッと温かい何かに包み込まれた。