王子様の甘い誘惑【完】
「ユキ……先輩?」
あたしは呆然としたまま身動き一つできなかった。
先輩の腕に抱きしめられてるって頭が理解したのは、それから数秒後のこと。
「俺、理生ちゃんが泣いてるの見てられない」
「え……?」
「蓮に傷付けられる理生ちゃんを見たくないんだ……」
先輩は力なくそう言うと、あたしの体に回した腕にギュッと力を込めた。
蓮に傷付けられるあたし……?それって、どういうこと?
「あの……先輩……――」
「俺はずっと、愛子が好きだったんだ」
……えっ?それって……どういう意味?
あたしは先輩の胸に抱きしめられながら、その話に耳を傾けた。