王子様の甘い誘惑【完】
その瞬間、心臓がザワザワとうるさい音を立てた。
胸が苦しくなって、蓮の顔をまともに見れない。
さっきまではなんともなかったのに。
何でこんな気持ちになるの……?
自分自身に問いかけてみても答えなんて出せなくて。
答えを出すわけにはいかない。
だって、あたしと蓮は契約で繋がっているだけなんだから。
「……ご飯、どっかで食べてきちゃった?」
「まだ。理生は?」
「あたしもまだ食べてない」
それだけ言うのが精いっぱいで。
あたしは素っ気なくそう言って蓮に背中を向けると、逃げるようにキッチンに向かった。