ある聖夜の物語《短》
注がれた紙コップに口を付けながら、そういえば今日のタキはよく動くな、と思う。
いつもならお出迎えなんて絶対にしてくれないし。あっ、でもジャケットはいつもかけてくれているか。
でもいつもは冷蔵庫に飲み物を取りに行くのは、クラスメイト達の役目なのに。
やっぱり……クリスマスだからかな。
「相変わらず固いよな」
普段は物ぐさでも年に一度くらい、人の役に立ちたくなるんだろう。
そう結論を出すと同時に聞こえてきた声にタキを見ると、手酌で紙コップを赤ワインで満たしている最中だった。
「だって全員、私のことが好きなんじゃなくて私と寝たいだけなんだよ」
別に、私は固いわけじゃない。
だけどそれだけが目当ての男と付き合うほど馬鹿でもないし、割り切れるほど大人でもない。
「おい。女がそんなこと言うなよ」
怒っているような呆れているような顔をしたタキに、ポンッと頭を叩かれた。