ある聖夜の物語《短》
その言葉にタキは何だか困ったように笑っていたけれど、私の頭に置いていた手をどけて立ち上がると、冷蔵庫から赤ワインを取り出してきた。
タキの表情に浮かんできた疑問は、赤ワインを見た瞬間にはどうでもよくなり。
ワイングラスなんて洒落たものはこの部屋にはないから、たまたまテーブルの上にあった紙コップに赤い液体を注いだ。
「ノエはこの一ヶ月で何人に告られたんだ?俺が知ってるだけでも十人はいるけど」
機嫌良くワインを飲み干した私が手酌で注ごうとすると、それを伸びてきた手が阻止して瓶を奪われる。
それをとても優雅な動作で、紙コップに注いでくれるタキの顔は意地悪くゆがんでいた。
「さあ?数えてないからわかんない」
甲斐甲斐しくお世話をしてくれるタキに笑顔でお礼を伝えて、事実を言葉で伝えた。