ダークエンジェル

信秀の顔を見ながら… 

まるで訴えるように、
自分の罪に怯えているかのような様子、

堰を切ったように泣いているカイル。

それはまさに… 子供の泣き方だ。



「カイル。」



驚いたリュウは急いで父を押しのけてベッドに、

ベッドに横たわっているカイルに駆け寄り、

カイルの肩の辺りを抱きしめている。

説明など出来ないが、
衝動的にしている行為だった。



「リュウ、ごめん。
リュウに母親がいないのは私のせいだったんだ。

言わなくてはいけない、と思ったけど言えなかった。」



そんなリュウに、
涙を流したままカイルは謝っている。



「カイル、どうしてそうなるのか、
分るように話してくれないか。

ソフィアは事故で死んだんだよ。
役所の前でひき逃げに遭ったんだ。」



信秀も優しくカイルの手を握り締め、話しかけている。



「確かに死因はそうだけど… 
私がママとの約束を破って、
ママを見に行っていたから… 

ガクトの手下が私を見張っていて、
あとをつけてきて… ひき殺した。

私のせいなんだ。
ママは最後まで慎重にしなければいけない、
連絡を入れたら出て来い、って言っていたのに… 

私はママにおいて行かれないかと心配で… 
言いつけを守らなかった。」


「じゃあ、カイルはあの光景を… 」



信秀は呆然としたような声を出した。



「すぐに車に乗せられてしまったから… 

でも、ママが死んだのは分った。

高倉さんは半狂乱のようになっていた。
私はママと一緒に死にたかった。」



その場の様子がスクリーンを見ているように分る信秀、

その時のカイルの心情… 

16年間、その光景から逃れられずに
悩んできたカイルがここにいる。

信秀には、あまりにも悲しいカイルの言葉だった。

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