ダークエンジェル
そんな事を思いながら信秀はカイルの言葉を待っている。



「あそこにはいろいろな資料もあり、
それなりの警備がいたから、
ピクトルは入るのを躊躇った。

ママの存在でピクトルの母はガクトに追い出されていたから、
その恨みもあったと思う。」


「しかし、ソフィアは… 」


「あいつに真実など分らない。
ガクトは怖いが5・6歳の私なら、と思ったと思う。

私は図書室で知識を蓄えながら、
いつかはガクトを殺してやろう、と言う考えだけになっていた。」



カイルの瞳には涙が溜まったままだが、

その時のカイルの瞳は、

言葉には出来ないほど冷たいものになっていた。



「カイル… そんな事を考えて生きてきたのか。」



信秀は慄いたような声を出している。



「はい。図書室は格好の場所でした。

私は純粋に本が好き、
コンピューターを触るのが好き、と言う振りをして、
キングワード財団、全てを学習しました。

ご存知の通り、今は全てコンピュータで記録されていますから… 

何も感じない管理人は、
いろいろな事を、
とても幸せそうな顔をして教えてくれました。

資料の中にママの名前が沢山出てきました。

ママは財団の発展に、
とても貢献していたのです。

ガクトはそんなソフィアの血をひく私をずっと手元に置きたかった。

それで17歳の誕生日に、

大西洋に浮かぶ小さな島の権利を私にくれたのです。

そこはマール島、と呼ばれ、
表向きはただ石油が少しだけ出る島ですが、

実はレアメタルの宝庫で、
あのレアアースも多量に含まれていて、

そのお陰で財団の電子機械部門が発展しているのです。」


「レアアースって聞いたことあるけど、何。」



どうしてカイルがそんな話を始めたか分らなかったが、

リュウも全ての話が気になっている。



「うん、携帯電話などを作るにも必要なものだよ。」



リュウが聞けば… 
いつものようにカイルは応じてくれる。




「カイル、それがどうして私たちと関係があると言うのだ。」



話が逸れているように感じた信秀が声を出した。

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