ダークエンジェル
あの人は結婚する前、当然働いていたのだろうから、
その間二人の子供をどうしていたのだろう。
大学の研究室で働くぐらいだから
生活に困っていたはずは無いが、
子供は身内がいて見ていてくれた、
と言うところが普通のように思われる。
しかし、リュウに聞いてもらちが明かない。
特に今のリュウは
親父さんの事しか考えられないだろう。
その内には警察が義母さんの実家などを調べ、
連絡してくれるだろう。
とにかく自分はリュウのことを…
今のリュウは親父さんと一緒に消えそうな雰囲気だ。
あんな心細そうな様子…
見てはいられない。
一緒に泊まってやりたいが…
まるっきり他人の自分では病院関係者が嫌がるだろう。
12時ごろまでここに居て…
明日早くに、着替えや、食べ物などを運んでやろう。
水嶋は、知り合ってから4年、
いや、5年目に入っている1年下のリュウが、
実の弟より気になる存在と言う事を再確認し、
そのリュウをひとり残して家に戻る気がしなかった。
「リュウ、少しは眠ったか。」
翌朝、着替えと朝食を持った水嶋は、
リュウの、その涼しげな瞳が充血しているのを見て
様子は分かったが、
それでもあえて普通の言葉をかけている。
たった一人の父親が意識不明の重態で
平気な気持でいられるはずが無い。
幸い今日は日曜日。
ずっと側にいてやろう、
と言う気持ちで家を出てきた。
家族にもきちんと話をしてきている。