ダークエンジェル
「リュウ、炊き込みご飯の握り飯だ。
これぐらいは食べないとだめだぞ。
親父さんが目覚めた時、
お前がげっそりしていたのでは治るところも治らなくなる。
こういう時は子供のお前がしっかりしなくてはだめだぞ。」
不思議な事に、
儚げなリュウの様子を見ていると、
既に亡くなった義母と二人の子供の事は
全く頭から消えている水嶋。
心配なのはリュウのことだけだった。
が、昼近くになって現われた警察官が、
想定外の話を持ってきた。
「高倉美由紀さんのご実家はどこか分かりませんか。
4年前まで大学の研究室にいられたのですよね。
そこに残っていた旧姓・中川美由紀さんの提出されていた住所へ行ってみたのですが、
全くの別人が住んでいました。
勿論、美由紀と言う女性は知らないと言う事でした。
それで高倉さんと再婚された時の戸籍を調べてみましたが…
一体どういう事なのでしょう。
勿論、二人の子供の出生届も…
今のところ分かりませんでした。」
「リュウ… 」
その言葉に驚いたのはリュウより水嶋だった。
自分はあの義母さんとかなり親しく話をした。
勿論リュウのことだったが、
あの人が義理の息子になるリュウのことを
かなり気にしていたのは伝わっていた。
ただ、リュウは、訳なんか無いけど嫌いだ、
と言って寄り付かなかった。
父親をとられたような気持になっていたのだろう、と思っていた。
もう少し大人になれば…
どう考えてもリュウの精神年齢は幼いところがある。
もう少し精神的に大人になれば、
そんなわだかまりも消える、と思っていたが…