スキトキメイテキス【BL】
 
「十流くん、お疲れ様」


 帰り支度をしている僕の肩を叩いたのは、同じくアルバイト店員の清水瞳[シミズヒトミ]さん。

 近所の女子大に通っていて、僕より長くここでバイトしている。


「お疲れ様です」


 現在時刻は20時を過ぎたところだ。

『Le Ciel』は19時になるとCLOSEのプレートを入り口に掛ける。

 それでも駆け込みのお客さんはいるし、片付けや何やらをやっていれば21時近くなることもよくある。

 クリスマスともなればきっと、もっと遅くなるんだろう。


「水野さんが呼んでたから、帰る前に顔出していってね」

「げっ……」

「そんなに嫌な顔しないの。さっきケーキ貰ったから、十流くんにもケーキじゃないかな」


 売れ残ったケーキをくれるのは良くあることだけど。


「絶対ケーキだけじゃないですよ。あの人、一言二言いつも多いし」

「十流くんのこと、気に入ってるんだよ」

「それは絶対に無いです!」

「そんなこと無いよ。気に入らなかったら柳瀬さんみたいにクビにしてるって」

「…………」


 柳瀬さんというのは、僕が入った後からバイトに来た人のことだ。

 シフトの関係で一緒にならなかったからどんな人なのかは良く分からないけど。

 接客態度が余り良くないとかで、3日でクビになったとか。

 本当にそんな人居るんだ、って思っただけだったけどね。
 
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