ガチンコ勝負!vs.中坊
初球、外角のストレートで様子を窺うと、見逃しストライクである。

というか、予想以上にキレのある直球に手が出なかったことは、小僧の唖然とした表情から容易に読み取れた。

フッ、愚か者め。

相手に心の内を見せないことは勝負の鉄則だぜ?

二球目、ミエミエの速球待ちである敵の意表を突き、スローカーブでタイミングを外して空振りを奪う。

クックックッ、あっというまに追い込んだぞ。

それまでは時折笑顔も見せていた小僧の顔が、次第にこわばっていく。

仮にも現役バリバリの野球部員ともあろう者が、引退して10年以上経つロートルピッチャーに打ち取られるなんてことは、彼のプライドが許さぬのであろう。

フン、そのチープなプライド、ズタズタに引き裂いてやろう・・・。

三球目、インハイのマジ投げストレート(独断推定約135km)で身体を起こす。

うひぁっ!と仰け反るように避けてボール。

むふふ、完璧な配球だ。

そして、勝負球の四球目、真ん中低めにストーンと落ちるフォークボールで、見事空振り三振に斬り捨ててやった。
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