汚レ唄


はぁ。


俯きながら、手首の包帯を眺める。





きれいに巻かれた包帯。


切ることでしか逃げられない弱虫な私に、それでもいいよとキミは笑ってくれる。


頬に手を添える。






ニッコリと微笑みながら、那智のお母さんは優しくしてくれた。




私、決めたよ。


逃げる方法は切るだけじゃない。


カラオケだって、買い物だってなんだってある。



自分を傷つけることなく逃げる道はいくらでもある。


もう、絶対に切らない。



何があっても。



だって、こんな私でも大事だよっ言いたげにキミは手当てをしてくれるんだもん。



私が傷を作ったら、また、手当てをしなくちゃいけないもんね。



せっかく手当てしてくれたのに、また、手当てをしてもらうなんて、悪いじゃん。




それに、私には、泣いてくれる友達もいるし?



もう、絶対死にたいなんて思わない。



自傷行為なんてしない。






何があっても、立ち向かってやる。



膝の上でこぶしを握り締めた。


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