汚レ唄


別に無言じゃなくてもいいじゃねーか。



「お腹すいちゃって、早く食べたかったんだぁ」

ヘヘヘといつものように笑う羽香を見て何故かホッとした。





「ほらほら!!早く入ろうよ!!ここ、絶品だから」

そして、今度は腕を引っ張られる。



ノレンをくぐるとそこは、サラリーマン風なスーツを着た男たちが汗を流しながらラーメンをすすっていた。




この光景は、言うならば戦場。



ズズー!!と激しい音を立て合い、互いを威嚇するよう。





「適当に空いてる席座って」

と店員らしいおっさんが空席を指差す。


適当じゃねーじゃん。

そこ座れって言われてるじゃん。




「はいはーい」

と羽香は元気よく返事をする。



こいつ、こういう奴なんだよな。

誰とでもフレンドリー。




それに比べて、俺は……人見知り激しくって、いつも自分の世界に入る。


人と接するときも壁を作って接している。

まさしく、正反対。





だけど、俺は羽香には壁なんて関係なく素の自分を出せた。


それは、こいつ……羽香の無邪気の笑顔のおかげなんだと思う。


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