汚レ唄
「おっちゃーん、醤油ラーメン2つ!!」
「あいよー!!」
店内に響き渡るほどの大声が行き来する。
そのバックに流れる麺のすする音。
店内をよくよく見回してみると、……本当にきたねぇ……。
なんか、壁には油が飛び散ってるし、
チャーシュー、味噌、とんこつ……と1枚1枚手書きで書かれた札は壁にはってあるおかげで油の巻き添えを食らっている。
正直、あんなに歩いて、途中怒られて、その結果、こんな汚い店につれてこられて、……本当にここ旨いのかよ?
旨くなかったら、……別になんもねぇけど、損した気になるよな。
なんつーか、次の食事時にまで悶々してそう。
そうして、周りをキョロキョロと見回していると、左耳に激痛が走る。
「いってぇー!!っんだよ?!」
前に座る羽香を睨みつけると、左耳を思いっきり引っ張る手をパッと離した。
「なによ〜?あたしの趣味になにか不満でも?」
意地悪にコチラを見下すような目つき……こいつのこの顔には何故か逆らえないんだよな。