汚レ唄


さすがに俺も間接的にだけど、こんだけ聴いていると覚えてきて、鼻唄が歌えるようになったけど、自分のオンチはよくわかっているから歌うことはやめた。



だけど、春休みももうすぐ終わり、新生活が始まる頃……いつものように麻緋の部屋から聴こえる歌は……


相変わらずのピアノ曲と麻緋の歌声だった。



その歌声は、いつもの鼻唄ではなく、なんていってるのかはわからないけれど、確かに何かを歌っている麻緋の声だった。



隣の部屋で、しっかり聴き取れなかったけれど、それだけなのにもっと聴きたいという欲が湧いてきた。



惹きつけては離すことをしない引力のように耳に残る。



やばい。


直に聴きたい。





そんな欲さえも抑えることをさせない、そんな力が麻緋にはあった。




いや、単に俺が麻緋を好きだからかもしれないけれど……。




でもずっとずっと、それこそエンドレスで聴いていたい。


そんな気がする。



俺は、うざがられることを承知の上で麻緋の部屋のドアをノックした。

< 404 / 665 >

この作品をシェア

pagetop