汚レ唄
勿論、音楽を続ければ雅紀君に出会えると思ったけど、そういう打算的なものじゃなくて、音楽が楽しくて続けようって思った。
毎日部屋で歌って、春にはギターを買って、時間があればいつも部屋で歌ってた。
蒼とコンサートへ行って、生で演奏を聴いて、あの人たちのようになりたいって思った。
コンサート終わりに歌いたくてしょうがなくて、でも、歌えなくて我慢してる私に蒼は広々と歌える場所を教えてくれた。
蒼の前で、思いっきり歌って、人前で歌う快感を知った。
だから、ストリートミュージシャンになって、多くの人に私の歌を聴いてほしいって思った。
私が歌わなければ、蒼を傷つけずにすんだかもしれないのに。
私が歌ったから蒼は殴られた。
って思ってた。
歌うのが怖くなった。
歌うのが怖い??
違う。
蒼が傷つけられるのが怖いんだ。
蒼が殴られるのが怖い。
そうか……。
私、いつの間にか、蒼のことが好きになってたんだ。