alternative
時雨の言葉は続く。

「いいのだ、それで…仲間と共に楽しく過ごす…美味い物を食べる…想い人の笑顔を遠巻きから見つめる…そんな些細な日常があるから、我ら兵士は明日も生きよう、この戦いも生きて帰ろうと思える。兵士は厳しい訓練だけで生き延びている訳ではない。かけがえのない『日常』があるから生き延びられるのだ」

そう言って時雨は奈々の顔を見る。

「香月、貴様とて想い人くらいはいるだろう?皓は少々幼すぎるが…咲月など気の弱い所はあるが、大事にしてくれそうだぞ。ラルフもいいな。奴のあの白髪、色気があって魅力的とは思わんか?」

「なな…何言ってるんですか…」

奈々の顔が見る見る赤く染まる。

可愛らしい反応に、つい時雨は意地悪く追い打ちをかけた。

「その顔だと、どうやら分隊内に目当てはいるようだな。吐け。上官命令をないがしろにはしまい?」

「~~~~~っっ」

時雨少佐ってこんなキャラだったっけ。

そんな事を思いつつ。

「絶対…内緒ですよ…?」

奈々は時雨にこっそり耳打ちする。

彼女が誰の名前を告げたのか。

それは、二人だけの永遠の秘密…。

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