銀鏡神話‐玉響の驟雨‐
「があああっ」

絡みつく雷に苦しみ、床にリリーは倒れた。

手から離れた大剣を、ティーナはよいしょっと取ると、瀕死の彼女の手が届かないであろう場所へ投げ捨てた。

「次は貴女です、では――――御機嫌よう。」

聖法杖から次に出たのは紫雷の鎌。

鎌はフィルリアの首に食い込む。

「フィルリア!!」

「ギルバート!?
来るな!!来たら、許さねーからな!?」

何言ってんだよ。

お前が死んだら母さんは無駄死にだぞ?

「こっちの台詞だ!

許さねーよ!
お前が死ぬなんて許さねー!」

口では色々言える、でも力が無いんだ俺には。

走るけど、間に合わ無い――――

くそっ、くそっ、くそ――――

『力をあげる。』

え……

あんたは、そう、さっき通り過ぎた……

『煌の力、君は使える。』

思い出したよ。

あんたは今朝の夢でも語り掛けて来た……

『煌の力は聖を超える生の力。』

生の……力?

『覚醒するんだ。』

かく……せい……

『目覚めろ、煌王(こうおう)!』

う……

「ああああああああああああ」

凄い激痛に叫んでしまった。

込み上がってくる痛み、古傷が痛む様なこの感じは一体……

「嘘!? あんな小僧が煌王の器だというのか!?」

ティーナが何か言ってたけど、もう聞こえない。

走るんだ。

大好きな女の元へ。

「ギルバート!?」

あれ? あんなに遠かった筈なのに、もうフィルリアが目の前に……

「止めろっ!

煌の力を抑えろ!
出なければ此処は!」

さっきの重力使いの少女が叫ぶ。

「ぐぅ……」

ティーナが苦しみながら、外へ駆け出す。

他の見物者たちも立ち上がるや、走り出した。

「ギルバート……其の力はなんだ!?」

「良く解らないんだけど……俺どうなったの?」

鎌から解放されたフィルリアが聞いてくる。

力って何だ?

「自分の姿を見てみろ!」

?

艶やかな大理石に映るのは――――
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