銀鏡神話‐玉響の驟雨‐
「母親が……子供を護る……のは、当たり前の事……だろうが……

あんたもね……あたしの、大切な……大切な娘なんだ……からね……」

一回苦しそうに消えた右肩を抑えると、母さんは目を瞑った。

其れが永遠の眠りだという事を理解するのには、かなり時間がかかった。

「ケリア……母さん……」

燃えた真紅の絨毯から、冷たい灰色の床が見えた。

冷たい床に、母さんと法皇の血が広がる。

「赦さない……俺は絶対お前を赦さないぞティーナ!!」

きつくティーナ皇女をフィルリアは睨んだが、汚い物を見る目でティーナは見透かし返す。

「自分の立場、解ってますか?」

確かに、圧倒的にティーナが優勢だ。

聖法杖に皇女という身分。

格段の差がフィルリアの首を絞める。

だから、俺が有利にしてあげなければ……

加勢して、数でティーナを押さなければ。

そう思っているはずなのに、足が言うことを聞かないんだ。

動け、動け俺の足。

大切な家族を、もう失う訳には――――

「ああああああ!!」

「!? 裏切りですか、リリー。」

雄叫びを上げながら大剣をティーナに振り下ろすのは守護隊長リリー。

金髪の髪を優美に舞わせ、彼女の戦いは華やかなのだ。

「私は法皇様に仕えている。

法皇様を殺めた者に制裁を与えるのは、私の義務だ。」

莫迦でかい、俺の背丈位有るであろう大剣を軽々と振り回すその腕力は、あの細い体の何処から出る?


ガッ


大剣は大理石の床を抉り出した。

撒き散らされた大きな石が、観覧していた一人の元へ向かう。

危ない!!

「止まれ。」

声は子供の声だった。

それも女の子の。

ヒュ


岩に向かって差し出す手は白い――――雪よりも白かった。

手から出た黒色の光、岩は其の光に当たると宙で動きを固まらせた。

「重力使いだと!?」

リリーが気を取られた隙を、彼女は見逃さない。

『王家の皇女・ティーナが命じます。

破壊の力を私に授けて下さい。』

聖法杖から闇色の雷が降り注ぐ。


バリッ

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