銀鏡神話‐玉響の驟雨‐
はぁ!?
こいつは何言ってんだか……

「止めないのか?」

「止めたいけど、俺に止める権利は無いよ。

逃げる時は助けてやる。」

そう言った後に、捕まったら毎日面会に来てやると付け足したら、こいつは笑いやがった。

此がフィルリアの最後の笑顔だった……

なーんてならなきゃ良いんだがな。

「ケリアには世話になったと伝えといてくれ。」

って、おい、まさか本気じゃないよな――――?

解っただろう?

お前なんかには無理なんだぞ!?

「俺が嘘をついた事はなかっただろ。

つくづく莫迦だな。

でもさ、嫌いじゃなかったよ、ギルバート。」

顔を見られまいとそむける。

どうせまた哀しい顔をしているんだろうお前は?

……フィルリア!!

肩を掴んで、こっちに引き寄せようとした。
なのに、御伽話みたいに上手くいかないよな……

黒いローブはするりと俺の手からすり抜けた。

人込みにのまれていき、直ぐに姿を見失ってしまったんだ。
あの時、やはり俺は止めておくべきだったのだろうか?

今だに答えは出ないままだ。

「法皇様!」

「どうか私達に祝福を!!」

人々が叫び散らし、法皇に向かい賞賛の言葉を唱える中、
俺はフィルリアを探す。

早く進みたいのに、押しつぶされる一方で、思う様には進まない。

礼拝堂の最後部に有る、黄金の神の椅子までアイラがおくると、白い髭を立派に生やした法皇様が椅子に腰掛けた。

皆が黒いローブなのに対して白いローブなのは、民と違うと言うのを見せつける為だろう。

足には高級そうな革靴に、頭には青銅で出来た重そうな冠。

後ろの青い海の女神を上手く彩色し描いた、ステンドガラスから放射される白藍色の光は、全て法皇が独占している。

手に握る十字架型の白銀の枝で造られた杖は、聖術をつかう時に用いられる聖法杖。

天辺には瑠璃色の大きな宝玉が飾られている。

見れば見るほど魅入られる、深い色の珠……

他の宝石なんかには目もくれない俺でも、此れだけには興味がわく。

「神は言った……

聖なる力は永久に続くと。

絶対の我が聖皇国に、脅威等な……」
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