銀鏡神話‐玉響の驟雨‐
法皇様は威厳ある声で聖文書を唱えていたが、言葉が途絶えた。

何だ何だ?と、皆が法皇様の視線の先に注目した。

そう……黒いローブの人々の集団から、一人、自分に短剣を向け、走ってくる異端者を見つけたからだ。

「アイラ!!」

リリーが大剣を鞘から抜くと高々と頭上に上げた。

赤子や子供が泣き始める。

ピリピリし始めた、雰囲気の変わり様に気づいたから。

「分かってるよ……ったく。」

法皇様を一端、少し後ろに下がらせると、アイラは前に立つ。

腰から手馴れた手つきで二丁の拳銃を抜き取ると、向かってくる異端者に向けた。

「動くな、殺すぜ?」

「……お前がな!!」

声は予想通りフィルリアの声だった。

フィルリアは短剣をアイラに翳すと、詠唱する。

『万物の知神達よ、宿木の末裔・フィルリアが命ずる――――
矛の知と楯の知を、我に与えたまえ――――』


ヒュンッ


宙に浮くと、短剣は蒼い烈火を纏いながら、アイラに向かった。

『雷王鬼神の弾・スパルバーズ』

二つの拳銃から撃ち放たれた弾は、空を切り裂き進み行くうちに、黄色い雷の光を帯び出す。

「アイラの魔法弾だぁ!」

「やっちまえ!」

さっきまで怯えていた奴等は、皆アイラをまくし立て始めた。
くそっ……フィルリアがどんな思いかも知らずに……。

「……其処だ!」

人々の思う通りにいかないのが、物語の王道。

フィルリアは一本の長刀を抜くと、一瞬にして弾を真っ二つにした。

華麗に弧を描いた長刀を、瞬時に鞘に収めた。

「なっ!?」

考えてもいなかった事態に、アイラの顔は歪んだ。

「居合いか。 面白い……」

人々がまた慌てだした中、リリーがぽつりと言ってた言葉を、俺は聞き逃さなかった。

「ぐあっ……」

アイラの胸にさっきの短剣が突き刺さった。

その場にぐったりと倒れ込んだ守護隊長を見て、人々の不安はピークに達する。

「うわああああ!」

礼拝堂から走り、逃げ去る人々。
外への扉を開け、次から次へと出て行く。

「ギルバート! フィルリア!」

< 7 / 24 >

この作品をシェア

pagetop