始まりの音-絶対温度-
***

その日も一日中ただなんとなく過ごして、何となく終わる。何で俺ってこんなに空っぽなんだろとか考えてみたり。


「祥子ー」




遠くで女子生徒の甲高い声がした。俺は伏せていた視線を上げる。


クラスメートに呼び止められたらしいのは、松前祥子。

綺麗な栗色の髪に生意気そうな顔は目を引く美人で。いや、まあ外見に興味がある訳じゃなくて、


あの冷めた目。



あれが気になる。



誰からも視線を引いて、周りに絶えず誰かがいるのに、つまらなさそうな、興味がなさそうな瞳。

俺とよく似ていると、いつも感じていた。



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