モノクローム
進めていた足が、ぴたりと止まってしまった。
声の主は暗闇で顔はよく見えなかったけど、こっちを振り返ったような気がする。
声は男のもの。
特別低い声ではなかったが、男性独特の声色があった。
…さて、どうしよう。
とりあえず思い付いたのは、このまま逃げた方がいいってことだ。
私は男の声に気付かなかったフリをして、もと来た方向に戻ると何事もなかったように一歩踏み出した。
今更ながら、初めから誰かがいる時点で帰っていればよかったんだ。
はあ、と力のないため息をついたところでまたその声に止められる。
「…待ちなよ。何かここに用があったんじゃないの?」
私が聞いた限り、その声は私に待って欲しいなんて思ったような声じゃなかった。
だいたい、初めて会った人にこんな馴れ馴れしいこと、聞くだろうか。